日本特別ニーズ教育学会は1995年創立以来、「特別ニーズ教育に関する理論的・実践的研究を通して、学習と発達への権利に関する教育科学の確立をめざす」ことを掲げ、歴代代表理事・理事の先見性と創造性、機関誌『SNEジャーナル』編集委員・編集協力委員や会員の方々の多大な功績により前進してきました。第10期理事会任期中の2024年には、創立30年の節目を迎えます。
2022(令和4)年10月30日に開催された2022年度日本特別ニーズ教育学会総会において第10期理事会が発足し、代表理事を務めることとなりました。これから3年の任期では、学会のこれまでの軌跡を受け継ぎ、皆様とともに未来志向の展開を試みたいと思いながら、その重責に身の引き締まる思いです。代表理事への就任に際し、一言ご挨拶申し上げます。
この約30年の歩みのなかで、特殊教育から特別支援教育へと転換し、障害者権利条約への批准や障害者差別解消法による合理的配慮の提供の義務化など、大きな節目をこえてきました。
第8期理事会(髙橋智代表理事)では、「文部科学省や関連学会もインクルーシブ教育推進に舵をきった時代における『特別ニーズ教育』のめざすものと『特別ニーズ教育学会』の価値・意義・役割の再整理・再確認が不可欠」とし、現代の特別ニーズ教育学とは何かを当事者性と権利性を明確にしながら問い続けてきました。第9期理事会(加瀬進代表理事)は、コロナ禍で「『時代と社会の転換点』のありようを見極めつつ、『学習と権利』の内実を描き出して豊かに保障する教育科学の確立に向かわなくてはならない」と尽力されました。
いま、世界はCOVID-19パンデミックや東欧における戦火の渦中にあり、まさに「時代と社会の転換点」を迎えています。2022年9月には、国連・障害者権利委員会の対日審査勧告において、日本では「長く続く特別支援教育により、障害児は分離され、通常の教育を受けにくくなっている」と懸念を表明され、小中高校で障害児を受け入れる準備が整っておらず、事実上の入学拒否が生じていることや、通常の教育を担う教員は(障害児を教えるための)スキルが不足し、インクルーシブ教育に否定的な態度をとっていること等が危惧されています。国連は、国レベルの教育政策や法律等で「すべての障害のある児童生徒が、すべての教育レベルで合理的配慮や個別の支援を受けられるように、十分な予算などを確保し、質の高いインクルーシブ教育についての国家的な行動計画を採用すること」を求め、「すべての障害児が小中高校に入れる手段の確保」「入学拒否を許さない政策の導入」「障害者の権利を学ぶための教員研修の実施」等を促しています。この勧告には拘束力はないものの、締結国は尊重しなければならないとされ、今まさに、本学会を起ち上げた時代と同様に、特別ニーズ教育に関する理論的・実践的研究を重ねて、議論をリードしていくべき時にあるともいえます。
このような多様化・複雑化が進む社会状況の動きや変化のなかでバトンを繋いだ今期は、時代の潮流にコミットメントしつつ、未来を遠望して特別ニーズ教育学を科学し、広く社会に発信していく役割を担わなければなりません。そのために、第10期理事会の基本方針として、「本学会の伝統の継承と特別ニーズ教育学の一層の進展」「次世代の人材育成」「社会への貢献」を掲げ、会員の皆様とともに前進していきたいと考えております。
学会運営の具体策は、理事会での議論を重ねながら皆様にご報告して参りますが、会員の皆様にも各種委員会・ワーキンググループにおける議論等にご参加・ご助力いただきたく、新たな運営体制を検討します。そして、会員の皆様と学会との相互のコミュニケーションを密にして風通しの良い学会にしていきたいと思います。
会員の皆様、特別ニーズ教育学の具現化を望む子ども・当事者の皆様、特別ニーズ教育学に関心を寄せる皆様とともに学びあい、社会からの期待・要請に応え、使命を達成していくことができるよう、真摯に取り組む所存です。第10期理事会における役割を以下のように分担いたしました。理事会・各種委員会・事務局が一丸となって諸問題に対応していきたいと思いますので、ご支援、ご鞭撻を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
2022年10月30日
代表理事 田部絢子
田部絢子(日本大学)
委員長 山中冴子(埼玉大学)副委員長 堤英俊(都留文科大学)編集幹事 池田吉史(東京学芸大学)
委員長 渡邉流理也(新潟大学)ウェブシステム・大会運営支援担当 野口武悟(専修大学)・能田昴(秋田大学)会報・渉外担当 池田敦子(東海学院大学)
委員長 松崎保弘(くらしき作陽大学)学会各種賞担当 樫木暢子(愛媛大学)若手育成担当 栗山宣夫(育英短期大学)社会貢献担当 菊地信二(幕別町保健福祉部)・森定薫(ピア・サポートセンターおかやま)
事務局長 内藤千尋(山梨大学)事務局長補佐 石井智也(兵庫教育大学)
武井哲郎(立命館大学)・羽山裕子(滋賀大学)
第10期理事会体制では、学会活動の更なる発展と当面する多様な課題に具体的かつスピーディに取り組むために、アーカイブワーキング・グループ(以下、WG)、会報WG、特別ニーズ教育学史WG、若手育成・社会貢献WGを設置することが理事会にて承認されました。
石井智也(理事・学会事務局)・石川衣紀・眞城知己・髙橋智田中謙・堤英俊(理事・常任編集委員会)・能田昴(理事・総務委員会)◎野口武悟(理事・総務委員会)・渡邉流理也(理事・総務委員長)
◎池田敦子(理事・総務委員会)・伊藤駿・小野川文子能田昴(理事・総務委員会)・橋本陽介・羽山裕子内藤千尋(理事・学会事務局)・渡邉流理也(理事・総務委員長)
猪狩恵美子・石井智也(理事・学会事務局)・石川衣紀石田祥代・奥住秀之・堅田明義・菊地信二(理事・研究委員会)黒田学・是永かな子・阪本美江・眞城知己・鈴木庸裕◎髙橋智・田中謙・田中良三・堤英俊(理事・常任編集委員)冨永光昭・中山忠政・能田昴(理事・総務委員会)・船橋秀彦松崎保弘(理事・研究委員長)・明官茂・森定薫(理事・研究委員会)米田宏樹・渡部昭男・田部絢子(代表理事)
赤木和重・石井智也(理事・学会事務局)・石川衣紀・内野智之加茂勇・菊地信二(理事・研究委員会)・栗山宣夫(理事・研究委員会)黒田学・児嶋芳郎・樫木暢子・髙橋智武井哲郎・内藤千尋(理事・学会事務局)・◎松崎保弘(理事・研究委員長)森定薫(理事・研究委員会)・田部絢子(代表理事)